研究概要 |
老化促進モデルマウス(SAMP8)は、学習・記憶障害の著しい系として確立されており、学習・記憶障害の進行に伴い脳幹に海綿状の組織変性を生じることが知られている。そこで、本研究では生後6,12,20,28週齢のSAMP8マウスの脳を大脳皮質、海馬、小脳、延髄を含むその他の部位に分け、脳の各部位ごとの過酸化脂質量をTBA反応値にて測定し、過酸化脂質生成に関与する酵素であるカタラーゼ、SOD、GSH-PX活性を測定し、週齢の違いによる過酸化脂質および関連酵素の変動について検討した。さらに、ミネラルと各酵素の関連を検討するための基礎的データを得るために、脳の各部位におけるミネラルの変動についても検討を加えた。 その結果、TBA反応値は週齢が進むにしたがって上昇が認められた。また、カタラーゼ活性は海馬、小脳部位で週齢増加に伴い活性の上昇が認められ、SOD活性は小脳での減少が認められた。GSH-PX活性は海馬で、週齢増加に伴い低下が認められた。 一方脳中のミネラルはCa,Zn,Cu,Mn,Mg,Feの変動について検討した。その結果、MgおよびFe量は週齢の変化によって変動は生じなかった。Ca量は、週齢の増加に伴って増加を認め、特に海馬において著しかった。Zn量についても週齢の増加に伴い増加し、特に小脳において著しかった。Cu量は、週齢の増加により小脳での増加は認めたものの、小脳以外の部位での変動は著しいものではなかった。Mn量は全脳においては週齢の増加に伴う増加が認められたが、各部位別では確実なデータを得るに至らなかった。 以上の基礎的データをもとに平成10年度は、学習・記憶に関与する海馬および酵素活性の変動が認められた小脳を中心に検討を深めたい。
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