研究概要 |
平成9年度の研究は生後6,12,20,28週齢のSAMP8マウスの脳を大脳皮質、海馬、小脳、延髄を含むその他の部位に分け、脳の各部位ごとの過酸化脂質量をTBA反応値にて測定し、過酸化脂質生成に関与する酵素であるカタラーゼ、SOD、GSH-PX活性を測定し、週齢の違いによる過酸化脂質および関連酵素の変動について検討した。その結果、TBA反応値は週齢が進むにしたがって上昇が認められ、カタラーゼ活性は海馬、小脳部位で週齢増加に伴い活性の上昇が認められ、SOD活性は小脳での減少が認められたことを報告した。 本年度の研究は、脳中のミネラルの変動とSOD活性について検討した。脳は昨年の研究方法と同様に大脳皮質、海馬、小脳、延髄を含むその他の部位に分け、週齢の変化による変動を検討した。過酸化脂質蓄積に関連する酵素の内、老化に伴う変動が認められるSODの研究では、Cu・Zn依存型SODは細胞質に存在し、Mn依存型SODはミトコンドリア内に存在することが報告されている。そこで、脳中のZn量について検討した結果、全脳においては週齢の増加に伴い増加するが、皮質、海馬、その他の部位では著しい変動はなく、小脳において増加が著しかった。Cu量は、週齢の増加により小脳での増加は認めたものの、小脳以外の部位での変動は著しいものではなかった。Mn量は全脳においては週齢の増加に伴う増加が認められた。しかし、その他の部位では一定の傾向は認められず、皮質と小脳において増加が認められた。一方、SOD活性を細胞質中とミトコンドリア中で測定したところ、いずれも皮質、海馬、その他の部位では変動が認められなかったが、小脳では活性の低下が認められた。この結果と小脳でのZn,Cu,Mnの増加を認めた結果との関連を今後検討すると興味ある結果が得られると思われる。
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