研究概要 |
平成9,10年度の研究で、老化に伴う脳中ミネラルの変動と過酸化脂質蓄積に関連の深い酵素の活性について検討し、小脳での諸酵素の活性が著しいとともに、ミネラルの変動も大きいことを報告した。本年度は、生体内に存在する抗酸化物質の脳内分布と酸素との関連について検討を加えた。結果は以下の通りであった。 1.アスコルビン酸量は、脳のいずれの部位でも週齢に伴う低下傾向を示した。 2.グルタチオン量は、老化に伴う一定の変動は認められなかったが、他の部位よりも小脳部位で高値を示した。 3.レチノール量は、小脳、その他の部位で週齢に伴う低下を認めた。 4.α-トコフェロール量は、老化に伴い特に小脳部位で減少が認められた。 5.SOD活性は、老化に伴い小脳部位において活性低下が認められた。 6.カタラーゼ活性およびGSH-PX活性は、SOD活性と反対に老化に伴い小脳部位での活性上昇が認められた。 7.TBARSは週齢に伴い増加を認めたが、特に小脳部位で著しく増加した。 以上のことにより、老化に伴う脳中過酸化脂質の変動は、小脳が鋭敏に反応することが判明した。また、抗酸化物質について、α-トコフェロール量は週齢の進行に伴い特に小脳で減少を認め、過酸化脂質の指標として測定した。TBARSは反対に、特に小脳部位で増加を認めた。このことから、抗酸化作用を有する物質として、過酸化脂質蓄積に関連する酵素の変動と最も関連性が認められたのは、α-トコフェロールであることが判った。
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