本研究では第一年次に神奈川県および岡山県において、慢性疾患により長期在宅ケアを行う高齢患者を対象にした、医療・介護ニーズならびに医療・介護に関する保険と公的サービスの利用についての実態調査を行った。神奈川県では当初の対象者32名に対して30名の調査を、岡山県では当初の対象者60名に対して32名の調査を行った。本年度(第二年次)は、上記の調査結果の解析ならびに追加調査によって以下の点を明らかにした。 医療・介護に関する民間保険の加入者は対象者全体のわずか15%に過ぎなかったが、所得分布をみると中〜高所得層も保険加入によって医療・介護費用の補償を希望している傾向が見られた。公的サービスについては、代表的な5つの在宅サービス(ホームヘルパー デイケア、ショートスティ、訪問看護、入浴サービス)に関して、特に若い要介護者においてサービス利用数が多く、予想に反してADLや療養期間、同居家族数などとの関連は見られなかった。また仮想の介護代行サービスの利用希望においても、在宅サービス高頻度利用群で利用希望が有意に多かった。したがって、要介護者が比較的若年であることやサービス利用体験の多いことが、さらなる在宅サービスの利用につながる可能性が考えられた。その理由として、サービス利用には要介護者および介護者の好み、情報認知、周知度が深く関わっていることが考えられる。他方、介護サービスの支払方法やその適正額については明確な結論が得られなかった。この点についてはさらに調査対象数を増やすこと、ならびに新たな調査方法の開発が必要と考えられた。
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