健康学習の評価指標となる「主体的な健康管理能力」尺度開発のため、東京都文京区の40〜79歳の地域住民399名を対象に、2段階無作為抽出による調査を実施した。その結果、271名(67.9%)から回答があり、「主体的な健康管理能力」の中心概念であり、研究代表者が開発した「批判的思考能力」尺度について、以下の結果を得た。第1に、信頼性係数による分析の結果、予備調査の時とは異なり、15項目からなる尺度の信頼性が最も高かった(α=.839)。第2に、実際の尺度得点は、最小29、最大85、平均±標準偏差が54.9±9.7であったが、この尺度得点は、性、年齢との関連を認めず、高学歴ほど(p=.005)、そして職についているほど(p=.035)高いことから、この尺度の妥当性が支持されたものと考えられた。 一方、糖尿病患者における「主体的な健康管理能力」の形成には、情緒的適応、自己効力感、社会的支援が重要な役割を果たしているものと考えられたので、某大学医学部附属病院の糖尿病外来受診患者を対象に、外来受診時の待ち時間を利用し、自己記入式の調査票による調査を行い、これらの概念と、「主体的な健康管理能力」の結果を示す食事療法と運動療法の実施状況の関係を、新たな尺度を開発しつつ検討した。その結果、自己効力感が食事療法や運動療法の実施状況に最も大きな影響を与えていることが明らかとなった。
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