研究概要 |
妊娠母胎に対する温熱作用については,妊娠期では恒温性の向上がみられることからも、妊娠に伴い自律神経-内分泌系の変化をきたすだけでなく、免疫系に対しても非妊娠時とは異なる。マイクロ波はその温熱作用による様々な影響をもたらすが、妊娠母胎におけるその熱作用に対する神経内分泌免疫系の反応機序の詳細はよく知られていない。また、同じにその低いレベル暴露による妊娠母胎内分泌免疫系への影響も不明である。本研究では、低レベルマイクロ波の前身暴露ばくろによってもたらされる内分泌免疫系への影響を脳内神経伝達物質との関連において解明することを目的に、マイクロ波(周波数2,450MHz、強度2mW/cm^2、90分間)暴露による脾臓細胞中ナチュラルキラー細胞活性(NKCA)、血中プロラクチン(PRL)および下垂体のβ-エンドルフィン(βEP)および視床下部のCRHの変化を妊娠ラットにおいて検討した。マイクロ波暴露によって、妊娠ラットの血中コルチコステロンの変化を認めなかったことから、高レベルマイクロ波と異なり、低レベルマイクロ波は視床下部-下垂体-副腎皮質系を活性化させないことが示された。また血中PRLの上昇、脾臓NKCAの低下と、視床下部median eminenceの低下を認めた。オピオイド受容体拮抗剤のNaloxoneのip投与によって、マイクロ波暴露によって上昇した血中PRL、減少したNKCAと視床下部median eminenceのCRHをreverseした。一方CRH受容体括抗剤であるα-helical CRHのicv投与によっても同じく、マイクロ波暴露によって上昇した血中PRLと、減少したNKCA、また上昇した下垂体βEPをreverseした。これらの結果から、妊娠中のマイクロ波暴露による免疫機能低下には、マイクロ波暴露に際して視床下部CRH神経系と、視床下部あるおは下垂体のオピオイド神経系が刺激され、その結果、下垂体PRLが活性化されるという中枢性機序が考えられた。この系の存在により妊娠期では、温熱暴露に際し、細胞性免疫低下によって妊娠期のホメオスターシスを向上させると考えられた。
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