本研究の目的は、(1)大腸がん検診の有効性の評価、および(2)免疫便潜血検査と大腸内視鏡検査の精度評価にあり、その検討に際し長野県A村の大腸がん検診の成績および同村の大腸がんの罹患と死亡に関する統計を活用している。同村の大腸がん検診は1982年より今日まで継続しており、まず便潜血検査によりスクリーニングを行い、要精検者には全大腸内視鏡検査を実施している。17年間の平均受診率は58%で、大腸がんおよび大腸ポリープはそれぞれ受診者の0.14%、0.91%に発見されている。 1999年度は1998年度に引き続き、まず保健医療に関する同村の独自資料、死亡票、病院カルテなどを通して、同村における大腸がんの罹患者と死亡者の全員を確認した。つぎに、本研究最終年度の2000度に総括する3つの課題の基礎データを集積し、さらにその実施可能性を検討した。 すなわち、(1)大腸がん検診の有効性に関する症例対照研究(同村の大腸がん死亡者を症例群とし、同地区居住者で性・年齢などをマッチさせた対照群を選定して、それぞれの検診受診歴の有無を確認し、matched pair analysisによりオッズ比を算出して、検診受診者は未受診者に比べ大腸がん死亡が少ないことを示す)、(2)大腸ポリープ切除による大腸がん罹患減少効果(検診実施前より実施後で大腸がん標準化罹患比が低下していることを示す)、(3)大腸がん検診のスクリーニングおよび精密検査の精度評価(同村の大腸がん罹患者全員について、その大腸がん検診受診歴[便潜血検査および大腸内視鏡検査]を検診ファイルと照合することにより、スクリーニングおよび精密検査の診断精度を評定する)。
|