研究概要 |
平成9年度の研究実績としては、一つは平成8年7月に発生した堺市の腸管出血性大腸菌O157に関連する学童2,6918人について、喫食調査、医療機関調査、保健所調査などをもとにデータベース化した。さらに、これらの者を無症状者、有症状者、医療機関を受診した患者、菌陽性者、入院治療をした者、HUSの病態になった者等に分類し、追跡調査を行う基盤を準備した。二つ目として、平成8年9月に堺市内小学校(92校)を対象とした腎臓検診の実施した結果と平成9年2月に大腸菌O157患者の暴露(47校)のみを対象とした腎臓検診を行った結果をデータベース化して暴露の有無別に検討を行った。 その結果、平成8年9月全学童の尿検査成績について、ペ-パ-法による尿蛋白(±)以上の児童陽性者数とその割合は、暴露校における検査実施者25,656名については588名(2.29%)、非暴露校の検査実施者19,495名については、510名(2.61%)であった。暴露校(47校)と非暴露校(45校)のペ-パ-法による蛋白尿の出現率を比較すると、その陽性率には明らかな差はみられなかった。蛋白尿測定をズルホ法によって行っても、陽性率に顕著差は認められなかった。 平成8年9月に実施した腎検診の結果は、蛋白、潜血反応、顆粒円柱の出現率のいずれも平成7年度に比べわずかに高値であった。しかし、その増加はそれまでの腎検診にみられる年度間の変動範囲内程度であり、これをもって直ちに後遺症としての腎病変の増加と言うことはできないと考えられる。この2つの結果を安定したものではなかったことから今後、平成8年、平成9、平成11年の腎検診結果ならびに精密検査結果を検討することにより中長期的な健康影響について明らかにしていくことが必要である。
|