研究概要 |
肥満は、動脈硬化促進因子であり、近年増加している生活習慣病の発症や進展と関係が深い。しかし、わが国では生活習慣病は増加の一途であるにも関わらず欧米諸国のような重症肥満は少なく軽症や正常体重者の肥満、「かくれ肥満」が多いと推測されているが、体型の長期経過を検討した健康予後調査はほとんどないため、わが国の「かくれ肥満」の実態や疾病異常との関係など不明な点が多い。今回、わが国の肥満の疫学および臨床的意義を明らかにするために昭和30年以降保管されている新入生健康診断票から現住所がわかっている卒業生8025人全員を対象に、郵送アンケートによる健康予後調査を行った。 [結果] (1)アンケート回答率47.2%(3791/8025)。(2)体型・body mass index(BMI)Iの推移:BMI≧25で判定される肥満は、男で入学時4.0%→現在21.8%、女2.6%→5.6%と卒業後有意に増加していた。一方、BMI増加(>+2;約5kg)者頻度は男で54.8%、女で20.8%とBMIで肥満と判定されるものより多く、加齢とともに(25歳→60歳:男26.8%→65.4%,女4.3%→44.8%)、入学時やせほど(男:入学時やせ71.5%,ふつう55.4%,肥満23.6%、女:44.4%,18.7%,5.8%)高率で、女より男で顕著であった。(3)疾病異常頻度:入学時肥満傾向(BMI≧23)では卒後BMIが増加すると疾病頻度は増加しBMIが減少すると横這いか減少した。一方、入学時非肥満(BMI<23)ではBMIの増減とともに有意に増加しBMI不変(BMI≦±2)を最低にJカーブとなった。特に肥満に関連した各種疾患(高血圧症、高脂血症等)ではBMIの増加とともに有意に疾病異常頻度が増加したが、その他の疾患では横這い傾向であった。 わが国の「かくれ肥満」の殆どは20歳頃BMI<23のふつうからやせ体型であったものが加齢とともにBMIが増加したものと考えられ女より男に多いことが示唆された。「かくれ肥満」も疾病異常と関与する肥満であることが示唆された。
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