研究概要 |
長崎県全体(1990年人口=156万人)における、成人T細胞白血病/リンパ腫(ATL)および非ホジキンリンパ腫(NHL)の罹患率を推定した。HTLV-I抗体陽性のT細胞悪性腫瘍、または臨床的に"ATL"と診断されたものをATLと定義すると、長崎県全体では、1985→1995年に989人のATLおよび1,745人のその他のNHLが登録されていた。世界人口で調整した際の30-99歳におけるATLの罹患率(30歳以上、10万人年当たり)は、男性10.5(95%信頼区間9.6-11.4)、女性6.0(95%信頼区間5,4-6.6)と推定され、全NHL(ATL+その他のNHL)に占める割合は37-41%であった。長崎県K島4町(1990年人口=26,870人)では、1985-1995年に82人のリンパ系腫瘍が登録されていた。臨床検査所見(HTLN-I抗体、腫瘍細胞のT細胞表面マーカー、末梢血中異常リンパ球数、高カルシウム血症、皮膚症状など)をもとに、Levineら(1994)の診断基準をあてはめると、40人がATL、35人がNHLと診断された。世界人口で調整したATLの罹患率(30歳以上、10万人年当たり)は、男性23.7(95%信頼区間14.1-33.2)、女性11.5(95%信頼区間5.7-11.4)と推定され、全NHL罹患率に占める割合は51-59%であった〈Arisawa et al.,Int.J.Cancer85,319-324,2000)。 上記40人のATLのうち、発症前(1-9年前)の血清が凍結保存(-30℃)されていたのは、男性16人、女性7人、合計23人であった。残りの17人は、prevalent caseであるか、または血清が得られなかった。この23人と性・出生年・血清採取日(+1年以内)が同じで、対応する症例の発症前に死亡せず、かつATLを発症していない対照を一人の症例につきそれぞれ1-5人、ランダムに選択した。現在、症例群および対照群について、HTLV-I抗体価、soluble IL2-Recepter、p40tax抗体を分析中である。
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