研究概要 |
1.長崎の原爆被爆者集団3,090人を対象として、Human T-cell lymphotropic virus type-I(HTLV-I)感染と成人T-細胞白血病/リンパ腫(ATL)を除く死亡率との関連についての9年間のコホート調査を行った。性、年齢および他の要因の影響を補正しても、HTLV-I抗体陽性者の死亡率は、全死因、全悪性腫瘍、肝臓がんおよび心疾患で有意に上昇しており、HTLV-I感染がATL以外の死亡率に影響を与えることが示唆された。肝臓がんおよび慢性肝疾患による死亡率の上昇を解明するには、HCV/HBV感染による交絡およびHCV/HBVとHTLV-Iとの相互作用に関するさらなる調査が必要である。 2.HTLV-I流行地域におけるATLの羅患率およびその非ホジキンリンパ腫(NHL)の羅患率におよぼす影響の大きさについて検討した。長崎県の離島地域4町(1990年の総人口26,870人、HTLV-I抗体陽性割合16.2%)において、1985-1995年の間に40人のATLと35人のその他のNHLの発症が確認された。HTLV-I抗体陽性者におけるATLの生涯発症リスクは、男性6.6%、女性2.1%であった。長崎県全体(1990年人口=156万人)では、1985-1995年の間に989人のATLおよび1,745人のその他のNHLが登録されていた。世界人口で調製した際のATLの羅患率(30歳以上、10万人年当たり)は、男性10.5、女性6.0と推定され、全NHL(ATL+その他のNHL)の羅患率に占める割合は37-41%であった。 3.上記の長崎県の離島4町において、1985-1995年に発生した40人のATLのうち、発症前(1-9年前)の血清が凍結保存(-20℃)されていたのは、男性12人、女性6人、合計18人であった。この18人と性・出生年・血清採取日(±1年以内)が同じであり、対応する症例の発症前に死亡しておらず、かつATLを発症していない対照を一人の症例につきそれぞれ1-10人、合計126人選択した。現在、症例群及び対照群について、HTLV-I抗体価、soluble IL2-Recepter、p40tax抗体を分析中である。
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