スチレンの量・影響関係を確立し、スチレン個人暴露量と色覚異常や末梢神経および皮膚障害との疫学的な関連性を検討することを目的として、調査研究を行なっている。 本年度は、熊本県下でスチレンを使用するFRP事業所のほとんどを訪問し、その多くの協力を得て、まず各事業所のスチレン使用に関する資料を収集しスチレン作業者を同定した。平成9年10月から平成10年1月にかけて第1回目の集中調査(9事業所の各1-2日)を行ない、1)各人の作業歴の聞き取りと作業条件・作業内容に関するタイムスタディー、2)作業前後の自覚症状、3)作業環境中のスチレン濃度の測定、4)各作業者にバッシブサンプラーを装着してスチレン個人暴露濃度の測定、5)作業終了時に採尿してマンデル酸排泄量の測定、6)皮膚障害の臨床的観察、を行なった。 その結果、 1)スチレン作業環境濃度は低く、作業者の個人暴露濃度の平均の50%以下であった。 2)スチレンの許容濃度50ppmを越えた個人暴露濃度を示したのは10%未満で、これには防毒マスクの使用のみならず、中小企業であるが故の自然換気も有効と考えられた。 3)スチレン個人暴露濃度と尿中マンデル酸排泄量の相関係数はマスク未使用者で0.88と高かった。これらの回帰直線からFRP作業者のスチレン個人暴露濃度50ppmに相当する尿中マンデル酸排泄量は0.69g/gCrとこれまでの報告より若干低値であった。 4)皮膚診断により40%弱の対象者に何らかの皮膚の異常がみられた。 現在、これらのデータに自覚症状を加えて相互関連性を検討しており、来年度は上記集中調査を最も環境条件の悪い夏と、作業改善を積極的に進める予定の冬に2度実施し、全3回の調査結果の差異を検討する予定である。一方で、これらの資料・調査結果を各事業所に還元し、作業者ぐるみの健康教育に役立てたいと考えている。
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