本研究では沖縄県全域の高校生の抑うつ症状の有症率を明らかにし、抑うつ症状と心理社会的要因との関連性を検討することを目的とした。まず、思春期における抑うつ症状の危険因子と考えられる生活ストレッサーを測定する尺度を開発した。沖縄県都市部の中・高校生939名を対象に生活ストレッサーに関する調査を行い、因子分析を用いて、部活動、学業、教師との関係、家族、友人関係の5下位尺度25項目の思春期用日常生活ストレッサー尺度(Adolescent Daily Events Scale:ADES)を構成した。ADESは適当な内的整合性が認められ抑うつ症状について予測力を示したことから、ある程度の信頼性、妥当性を有する尺度であることが示唆された。 次いで、沖縄県全域の高校生について抑うつ症状と心理社会的要因に関する調査を実施した。沖縄県全6地域から、普通科および専門学科からそれぞれ1校計12校を選出し、それらの生徒3202名を対象に質問紙調査を行った。抑うつ症状はCenter for Epidemiologic Studies Depression Scale(CES-D)から測定し、心理社会的要因として上述の生活ストレッサー尺度(ADES)、社会的支援、社会的スキル、統制感、自尊心、健康習慣を用いた。抑うつ症状平均得点は男子15.9、女子16.7で、cutoff点を16とした場合の有症率は男子41.2%、女子50.4%で、いずれも有意な性差がみられた。重回帰分析を用いて、抑うつ症状に対する心理社会的要因の関連を検討したところ、男女とも生活ストレッサーが正の関連を、社会的支援、統制感、自尊心、健康習慣が負の関連を示したことから、高校生の抑うつ症状にとって生活ストレッサーは危険因子となり、社会的支援、統制感、自尊心、健康習慣は防御因子となることが示唆された。次年度は中学生を対象に同様の検討を行う。
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