研究概要 |
本研究では思春期集団の抑うつ症状と心理社会的要因との関連性を明らかにすることを目的として、沖縄県全域の全日制県立高等学校12校の生徒3,202名、公立中学校13校の2,660名を対象に質問紙調査を実施した。抑うつ症状はCenter for Epidemiologic Studies Depression Scale(CSE-D)を用いて測定した。また、心理社会的要因として、生活ストレッサー、セルフエスティーム、ソーシャルサポート、統制感、健康習慣を用いた。 階層的重回帰分析の結果、中学生、高校生とも抑うつ症状は生活ストレッサーと正の、セルフエスティーム、ソーシャルサポート、健康習慣、内的統制感と負の関連を示したことから、沖縄の思春期にとって,生活ストレッサーは抑うつ増強要因に、セルフエスティーム、ソーシャルサポート、健康習慣、内的統制感は抑うつ軽減要因になり得ることが示された。また、これらの関連性は一過性の抑うつ症状にも持続した抑うつ症状にも同様にみられることが示された。欧米やアジアの先行研究でも類似した知見がみられることから、これらの関連性は思春期にとって一般的な傾向であると考えられる。また、抑うつ増強要因の中では友達関係ストレッサーが、抑うつ軽減要因の中ではセルフエスティームが最も強く抑うつ症状に関連していたことや、これらの要因の性差によって抑うつ症状の性差が説明できることが示されたことから、思春期、特に女子の抑うつ症状の軽減を図る場合、友達関係ストレッサーの緩和とセルフエスティームの向上が必要不可欠な構成要素になることが示唆された。今後は、これらの構成要素を取り入れた学校における指導プログラムの確立と実践、および厳密な手続きを経た介入評価研究による十分な証拠の蓄積が課題となる。
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