研究概要 |
平成10年度も平成9年度に引き続き高血圧臓器障害の簡便なる評価法の検討を継続した。【目的】これまでに血管内皮の特異的増殖因子であるHepatocyte growth factor(HGF)は高血圧臓器障害で代償的に上昇している可能性が明らかにされた。本年度は対象数を増やし、24時間自動血圧計(ABPM:TerumoES-H531)により測定した血圧日内変動、家庭用血圧計(home blood pressure:TerumoES-P101)により測定された家庭血圧値および検診時随時血圧値とHGF、心電図変化、眼底変化の関連を検討し、高血圧臓器障害におけるのHGFの役割を解明する。【対象】対象は平成10年と平成11年度の住民検診において糖尿病、腎疾患、肝疾患が否定され降圧薬の服用がない者男性51名、女性64名(平均年齢63±9才)。全員の24時間血圧を日中30分毎、夜間1時間毎に測定して日中血圧の平均値(dSBP,dDBP)、夜間睡眠時血圧の平均値(nSBP,nDBP)を評価し家庭血圧(hSBP,hDBP)は就寝前、非飲酒時に3回の自己血圧測定を行い安定している2回の血圧値を記録した。早朝空腹時に検診を行い随時血圧(cSBP,cDBP)測定、採血、採尿、心電図測定、眼底検査を行った。HGFは既報のELIAS(Insutitute of Immunologty:Tokyo)を用いて測定した。【結果】全対象でのdSBP,dDBP,nSBP,nDBP,hSBP,hDBP,cSBP,cDBPはそれぞれ136±15,84±10,125±16.76±9,159±13,91±9,137±11,81±9mmHgあった。HGFは0.33±0.13ng/mlでありnSBP,nDBP,hSBP,hDBPとに有意な相関(それぞれr=0.45,0.52.0.35,0.38)を認めたが、dSBP,dDBP,cSBP,cDBPとに関連はなかった。心電図上の左室肥大があるものではHGFが高値の傾向を認めるも高血圧性眼底変化の有無でHGFに差異は認められなかった。【結論】心電図上の左室肥大ではHGFが高値であり、高血圧臓器障害を反映している可能性が示唆される。これは高血圧性臓器障害の代償機転によるHGFの分泌亢進によるものと考えられる。
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