JFM標準繊維状試料(日本繊維状物質研究協議会:JFMと労働省産業医学総合研究所が作製)12種類のラット(F344雌、250匹)腹腔内投与(5mg、10mg、20mg)を実施し、観察を続けている。現在までにシリコンカーバイドウィスカー(SC)、UICCクリソタイル(UC)、チタン酸カリウムウィスカー(PT)、セラミックファイバー1(RF1)、アラミド繊維(AR)を投与したラットに腹膜中皮腫が発生している。SCとPT投与による腹膜中皮腫の発生率には用量依存性がみられている。他のセラミックファイバー2(RF2)、ムライト繊維(RF3)、ウォラストナイト(WO)、ロックウール(RW)、グラスウール(GW)、チタン酸ウィスカー(ルチル型、TO)、ミクログラスファイバー(MG)には腹膜中皮腫の発生はなかった。解剖時の所見として、ほとんどの腹膜中皮腫は腹壁から腹腔内各臓器に1mm前後の白色の腫瘤が播種し、肝と横隔膜は癒着している。胸腔はじめ他の組織等への腫瘍の転移を認めた例はない。病理組織学的観察によると、肉腫型あるいは混合型を呈する例が多く上皮型は少ない。乳頭状の腫瘍は、1層から数層の腫瘍細胞がhyaluronidase消化性コラーゲンを含む結合組織で被覆されている。腫瘍細胞は、立方状で好塩基性の豊富な細胞質を有し、円形から楕円形の核を持っている。結節性の腫瘍は、多様な組織学的特徴を呈し、表面は乳頭状と同様の立方状腫瘍細胞が1層から数層被覆している。結節中心部の腫瘍は大型の核をもち、様々な大きさの空胞、不明瞭な細胞間隔の多角形細胞を有するものもみられる。ムコイド物質はPAS染色陰性である。この2形態は入り交じり、大きな腫瘍塊を形成する。化骨形成を示す例が全体の6%にみられた。今後、観察を続け平成11年度内に全例解剖、病理組織学的検討を行い本研究を完了する予定である。
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