研究概要 |
JFM標準線維試料12種類をラット(F344雄、330匹)に腹膜内投与(5mg、10mg、20mg)し2年間観察した。シリコンカーバイドウィスカー(SC)、UICCクリソタイルB(UC)、チタン酸カリウムウィスカー(PT)、セラミックファイバー1(RF1)、セラミックファイバー2(RF2)、アラミド繊維(AR)の投与ラットに腹膜中皮種を認めた。他のムライト繊維(RF3)(RF3)、ウォラストナイト(WO)、ロックウール(RW)、グラスウール(GW)、チタン酸ウィスカー(ルチル型、TO)、ミクログラスファイバー(MG)には腹膜中皮種をはじめ、投与による腫瘍の誘発はなかった。腹膜中皮種例は、血性腹水を貯留し腹壁から腹腔内各臓器に1mm前後の白色の腫瘤が播種、肝と横隔膜は癒着している。腫瘍の転移を認めた例はない。組織学的には肉腫型あるいは混合型が多く上皮型は少ない。化骨形成が6%の例にみられた。 繊維の発がん性をUCを基準として相対的に評価した。UC投与量と50%生存期間(中皮腫による)は対数的に反比例するので、各繊維による50%生存期間からUC相当量を求めた。その結果、SCとPTは、それぞれUCの2.45倍、0.23倍の発がん性と推定した。各繊維の重量あたりの本数が同じであると仮定すれば、傷害曝露による癌の100万分の1リスクは、石綿では1.3×10^<-6>fiber/ml(EPA)、4×10^<-6>fiber/ml(EPA)とされているので、SCでは0.5×10^<-6>fiber/ml(WHO)、1.7×10^<-6>fiber/ml(EPA)、PTでは5.7×10^<-6>fiber/ml(WHO)、17.4×10^<-6>fiber/ml(EPA)と算出される。また、環境基準は米国OSHAのPermissible exposure limit (PEL, fiber/ml)は、石綿で0.2なので、SCで0.09、PTで0.90となり、米国ACGIHのThreshold limit value(TLV, fiber/ml)は石綿が0,5なので、SCは0.21、PTは2.2となる。
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