職域一般定期健康診断項目の有用性評価のために以下の研究を行った。 4. 肝機能検査:従業員約5千人の某事業所のうち、40才以上の従業員約3千人全員を対象とし、そこで行われている身長・体重や肝機能を含む法定の定期健診項目をスクリーニングテストと考え、HB抗原およびHC抗体の検査、肝超音検査および詳細なアルコール摂取状況それぞれをB型、C型のウイルス感染、過栄養性脂肪肝、アルコール過剰摂取の確定診断として、健診項目の有効性(敏感度、特異度)を求めた。その結果GOT、GPT、γ-GTPの基準値以上をスクリーニング陽性とした場合、いずれも特異度はかなり高いものの、敏感度は50%に達するものはなく、これらの検査では半数以上が見逃されることが明らかになった。この結果は検査値の組み合わせでも変わらず、今日職域で肝機能異常の原因としてもっとも多い過栄養性脂肪肝は、身長体重から求めた肥満度の方が敏感度は高かった。 5. 尿糖検査:定期健診の際の尿糖検査の時機を産業医にアンケート調査したところ、107名の産業医のうち58%は、尿糖検査を空腹時に行っており、食後に検査していたのは3%すぎなかった。しかしこれとは別に、人間ドック受診男性455人のGTTの際の尿検査をGTTの結果と対比すると、空腹時の尿糖検査は特異度は100%であるのに対し、敏感度は10%で、空腹時に尿糖検査を行うと、糖尿病の10人の内9人を見逃すことがわかった。 6. AAI:今日の就業年齢層で、もっとも頻度の高い動脈硬化性疾患を早期発見するための検査として、足腕血圧比(AAI)を446人の男性労働者について検討した。その結果、AAIが1.0未満を陽性とすると、眼底の動脈硬化性変化を敏感度、特異度共に約80%で、スクリーニングテストとしての高い有効性を示した。 7. まとめ:以上の結果を踏まえ、今日の定期健康診断の問題点を指摘すると共に、改善のためのいくつかの提案を行った。
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