研究概要 |
1. 自然出生力集団における多胎出産と出生力 多胎出産と単胎出産とで、年齢階級別、母親の出産年齢別にみた出生間隔が異なるかどうかを比較検討した。北米の2つの自然出生力集団の人口ベースの動態記録(French Canadians,Hutterites)を用いたところ、昨年度の報告にも示したように、両集団とも30歳代前半で双胎出産前の間隔が延長していた。この現象はとくに異性双生児(多排卵性)を出産した母親で見られた。この結果は、若い年齢で正常範囲を超えて出生力が低下したときに、多排卵による双胎妊娠が起こりやすい可能性を示している。なお、家系内の双生児出産傾向を識別する作業は、データリンクの限界から、今回の解析には用いることができなかった。 2. 現在の日本の多胎出産経験者の出生力 昨年度のデータを用いた解析では、異性双生児出産母では、同性双生児出産母に比べて、初潮年齢が若く、月経周期では短周期者の割合が有意に多く、生殖機能はむしろ高いように思われた。これは、自然出生力集団の結果と一見矛盾するが、現在の日本の出産は高齢出産が少ないので、高齢における現象が隠されている可能性が考えられた。本年度はさらに、何らかの不妊治療経験ありの群と自然受胎群との比較解析を行った。その結果、不妊群では自然群に比べて、月経周期の異常(無月経、長周期者)が多く観察され、また、避妊をしなくなってから出生につながる受胎までの月経回数が多く、約1年後での受胎者割合は3割程度であり、また、妊娠中のつわりが重く、切迫流産の体験者が多くなっていた。しかしながら、総平均でみると不妊群から生まれた双生児の出生時体重が軽くなっていた現象は、在胎日数、出生順位、児の性別、性の組合せ(同性/異性)の要因で調整すると有意ではなくなった。したがって、出生時体重を指標にした場合、不妊群の結果が自然群に比べて劣っていることはないと考えられた。
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