研究概要 |
1. 自然出生力集団における多胎出産と出生力 北米の2つの自然出生力集団の人口ベースの動態記録(French Canadians,Hutterites)を用いて出生力低下と双生児妊娠が関連するという仮説を検証するために、年齢階級別、母親の出産年齢別に、多胎出産と単胎出産とで出生間隔が異なるかどうかを比較検討した。両集団とも、30歳代前半で双胎出産前の間隔が延長する傾向が認められた。この現象はとくに異性双生児(多排卵性)を出産した母親で見られた。この結果は、加齢によって出生力が低下してくると、多排卵による双胎妊娠が起こりやすくなる可能性を示している。 2. 現在の日本の多胎出産経験者の出生力 双生児を出産した母親に質問票調査を行った。出産歴のほか、初潮、月経周期、妊娠までの期間などを調査した。不妊治療例を除く自然群について、異性群(2卵性、n=169)と同性群(1卵性が中心、n=888)とに分けると、異性群では初潮年齢が有意に若く、短周期型の月経が多い傾向にあった。しかし、妊娠成立までの月経回数は、両群に有意差はなかった。現在の日本の自然な双胎妊娠には出生力の低下は認められなかったが、これは現在の日本では高齢出産が少ないためとも考えられる。さらに不妊治療経験あり群(n=460)と自然受胎群との比較解析を行った。その結果、不妊群では自然群に比べ、月経周期の異常(無月経、長周期者)が多く観察され、また、出生につながる受胎までの避妊を行わない月経回数が多く、約1年後での受胎者割合は3割程度であり、また、妊娠中のつわりが重く、切迫流産の体験者が多くなっていた。しかし、不妊群から生まれた双生児の出生時体重が軽い現象は、在胎日数、出生順位、児の性別、性の組合せ(同性/異性)の要因で調整すると有意ではなくなった。したがって、出生時体重を指標にした場合、不妊群が自然群に比べて劣る証拠はなかった。
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