研究概要 |
1) 高静磁場曝露による生体作用として、肝酵素の1つであるGOT値の上昇を観察したことから、さらにP450活性を測定し、酵素活性への直接的作用の有無を検討した。 2) BALB/c雄マウスを5T(T:tesla,1T=10,000 gauss)の高静磁場に全身曝露すると、48時間曝露では、体重および飲水量は対照群と比べて有意(p<0.01)に減少した。72時間まで延長曝露した場合には、体重の減少はなくなり、むしろ若干増加傾向を示した。摂水量および摂餌量は対照群に比べてやはり増加傾向を示した。これは、高磁場に対する慣れによるものか、その原因は明らかではない。いづれにしても、高静磁場の生体影響に関する研究を発展させる方向の1つとして、ストレスと生体反応の追究も考えられる。 3) 変異原性試験としてAmes test、ショウジョウバエ翅毛スポットテストおよびショウジョウバエ体細胞試験を用いて高静磁場または低周波電磁場曝露あるいは高静磁場と変異原物質を複合曝露したところ、変異原性修飾効果が認められた。 4) 哺乳類培養脳神経細胞(アストロサイト)を用いた小核試験に高静磁場がおよぼす影響を見るため、基礎実験としてラット胎児脳細胞を培養し、小核試験の系を確立するための基礎実験を行った。すなわち培養細胞に認められる小核を指標に抗がん剤であるmitomycin C(MMC)を複合曝露し小核誘発頻度を検討した。その結果、MMCによる小核誘発を有意に検出することが可能となった。今後、磁場曝露時と比較し、電磁場と脳腫瘍の関係を明らかにできるものと考える。 5) 電磁場のDNAへの修飾作用を見るため、基礎実験としてE.coliを用いてp-aminophenolへのDNAへの作用を検討した。その結果、過酸化水素と鉄(FeIII)の両者の反応で誘導された-OHラジカルが酸化的DNA傷害を引き起こす事が明らかとなった。今後、電磁場曝露下で、この反応がどの様に変化するか検討することは、電磁場の作用を知る上で有用である。
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