二枚貝を原因とする非細菌性急性胃腸炎が近年多発している。ウイルスが原因と考えられたが、ウイルスの分離が行えないことからその実態の把握が困難であった。しかし、PCR法の確立(RT-PCR)により、その検索が可能となった。 我々は、汚染の状況を把握するためにカキ(N県)及びホタテ貝について生食を行わない夏期を含めた長期(毎月1回)のわたり観察した。さらに冬期は市販のカキについても検索を行った。対象としたウイルスはNorwalk-like-virus(NL Vs)、アストロウイルス、A型肝炎ウイルスである。 その結果、N県産のカキからは我々が検索を開始した1995年9月より採取した46検体中16検体(34.8%)からNL VsRNAが検出された。遺伝子型はG1型が6/16、G2型が5/16、未同定5/16であった。 A県産のホタテ貝は、1995年10月より採取を開始したが2000年2月と3月に初めてNL VsRNAが検出された(53検体中2検体、3.8%)。遺伝子型はG2型であった。カキ、ホタテ貝共アストロウイルス、A型肝炎ウイルスは検出されなかった。 市販のカキは、46検体について検査を行ったところ9検体(19.6%)からNL VsRNAが検出された。遺伝子型はG2型が7、未同定2でありG1型は検出されなかった。アストロウイルスが1検体から検出された。A型肝炎ウイルスは、検出されなかった。 食中毒例については、2000年1月にN県のホテルに宿泊したスキーツアー客の食中毒例があった。各県の衛生研究所から患者便より検出されたNL VsのPCR産物の分与を受け、遺伝子配列を検索したところ、遺伝子配列は多少の差は見られたがG2型があり、共通の食品はホテルで供されたカキが有力視された。
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