研究概要 |
本研究は,快適職場形成のための前提条件である“安全"および“衛生"について,身体的ハンディキャップを持った作業者の立場から検証し,さらに,現場の実態調査から,身体的ハンディキャップを持った作業者-特に,高齢者および身体障害者-を考慮した快適職場環境形成のための基礎資料を得ることを目的とした. 平成9年度は,以下の研究結果を得た. 1.中高年労働者に対する法律上の配慮:「労働安全衛生規則,第3編衛生基準」の内容について,中高年労働者に配慮を必要とする条文とその問題点および改善策を考察した.その結果,作業面の照度,表示物,休憩設備等に特に配慮が必要であることが示せた. 2.身体障害者授産施設の作業者に対する疲労の自覚症状調査:福祉的就労の場である身体障害者授産施設で働く障害者の疲労の実態を明らかにし,より快適な作業環境形成のための基礎資料を得ることを目的とした.身体障害者授産施設で訓練を受けている利用者43人に対し,日本産業衛生学会の“自覚症状調べ"を用い,作業者の疲労感を調査した.次の結果と考察を得た.(1)自覚症状の出現様式は,一般型:[I>III>II]に分類できた.(2)本調査の作業者の訴え率は,作業前および作業後とも他の業種の作業者に比べて高かった.(3)作業前後の訴え率の増加は他の業種の作業者と同程度であった.(4)この原因として,前日の疲労が残っているのではないかと推測した.すなわち,疲労回復が重要課題であると考えられた.(5)健常者と比べて,身体障害者の疲労回復の手段が限られていると推定した.今後,身体障害者を考慮した物的環境の改善,さらに人間関係,集団中の個人差,職務満足等に対処できる人的資源として産業ソーシャルワーカーの活躍が重要になると考えられる.
|