研究概要 |
従来,職場環境は健康な比較的若い男性中心に論じられがちであったと考える.快適職場についても,ともすれば,同様の傾向に陥りやすい.本研究は,身体的ハンディキャップを持った作業者-特に高齢者および身体障害者-の視点から,快適職場形成のための前提条件である「安全」および「衛生」について検証した.さらに,疲労やストレスを感じることの少ない快適職場形成のためのソフト面(人的資源)について検討を加えた.平成10年度は以下の結果を得た. 1. 快適職場形成因子快適な作業環境を形成するための要因を知るために,[職場の快適性に関する調査]を実施した.安全衛生関連の講習会の参加者146人を対象として,職場で不快,不満に思うことについて自由回答を求めた回答結果は「快適職場指針」の快適な作業環境の形成についての目標事項に分類できないものも多く,特に,人間関係に関する回答が多かった.職場の人間関係,集団中の個人差,職務満足等の問題に対処できる人的資源の必要性を認めた. 2. 快適職場の実現とそのマネージメント 快適職場を実現するためには,「快適職場指針」の実行に加えて,人間関係などの問題点を解決できるような仕組み(ソフト面:人的資源)造りが必要と考える.すなわち,物理的な環境の整備に加えて,これら以外の問題-人間関係,集団中の個人差,職務満足-等の問題に対処できる人的資源として,産業ソーシャルワーカーの活躍が必要と考える.ソーシャルワークとカウンセリング技術を習得した衛生管理者が産業ソーシャルワーカーに最も近い人材であると考える.高齢者や身体障害者のようにハンディキャップを負いやすい人たちに対して,安全で快適な職場を形成するためには,今後,衛生管理者に対して,ソーシャルワーク及びカウンセリングに関する教育を展開していく必要があると考える.
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