研究概要 |
近年の抗HIV薬の開発は、エイズ発症予防としての効果が期待される一方で治療費の増大が懸念されている。本研究では、CD4細胞数を基準に患者の病態を、AC-1群(CD4細胞数が500以上)、AC-2群(同200から500未満)、AC-3群(同200未満)及びAIDS群に分類し、病態別のエイズ医療費、特に医療費に占める抗HIV薬費用を分析する。 本年度は、エイズ治療を行っている5病院の各病態群に該当する患者について、外来治療・入院治療にかかる医療費を保険請求レセプトから調査した。患者数は、AC-1群が28人、AC-2群が45人、AC-3群が34人、AIDS群が46人、合計153人である。主に投薬、注射、処置、手術、検査、画像診断などの項目別に保険点数を調べ、複数月にわたるレセプトはその合計を求めて治療実日数で平均化した。1ヶ月に要する医療費は、各群の平均医療費総額(1日当たり)に平均受診日数あるいは平均入院日数(いずれも1月当たり)を乗じて算出した。抗HIV薬については、レセプトの明細からAZT、ddl、ddCに該当する点数を計上し、医療費総額に占める抗HIV薬の割合を求めた。 非血有病ケースの外来医療費(1日当たり)は、抗HIV薬の未治療患者では、AC-1群が平均15,115円、AC-2群が16,888円、AC-3群が19,091円、AIDS群が21,230円で、検査料が全体の70%を占めていた。これに対して、抗HIV薬治療患者では、AC-2群が37,734円、AC-3群が55,405円、AIDS群が38,861円で抗HIV薬未治療患者に比べて高額であった。また、月当たりの医療費は抗HIV薬の治療のないAC-1(およそ20,000円)を基準にすると、抗HIV薬医療を受けているAC-2、AC-3各群の医療費はその2.5倍、3.5倍であった。これらの群では、投薬料が全体の7割を占め、特に抗HIV薬の費用割合は60%強であり、HIV感染症の治療に占める抗HIV薬の比重の大きさが示された。 血友病ケースにおいても同様の傾向が見られ、抗凝固因子製剤の在宅医療費を除いた医療費に占める抗HIV薬の割合は4-6割を占めていた。
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