今回の研究では、タクシー運転手のVPC頻度の増加に果たす運転作業での職務ストレスstressの役割を検討した。 1. 深夜勤務が心室性不整脈の出現にいかなるを及ぼしているのかを勤務日、勤務明け日、公休日の観測を通じて検討した。VPCの所見を有するタクシー運転手の運転業務は、VPCの出現頻度を増加を誘発すると共に、運転業務の負荷およびストレスが強い場合には深夜勤務時におけるその頻度は日中に較べ、増加する可紺姓が示された。また、深夜運転を含む20時間前後の運転業務のVPC出現への影響は、勤務日だけではなく、その後の勤務明け日、さらに引き続く公休日にまでも及ぶ可能性が示された。特に、勤務明け日の昼眠時間に不足がある場合には、出現頻度が増すだけではなく、虚血性変化を有する運転手の場合には時にVPCの重症度も増強する場合もありうることが明らかになった。 2. タクシー運転手のVPC出現頻度の増加に果たす運転作業での職務ストレスstressの役割を、健康診断の心電図で虚血性変化や心室不整脈を指摘され、降圧剤を服用をしていた43歳の男性常夜勤タクシー運転手(運転歴15年、勤務歴4年)の事例で検討した。心筋に虚血性変化が推定された対象運転手の場合、夜間勤務が連続して長く続き、睡眠不足が推定されるような体調変化の中で、営業運転という状況がVPC出現の誘因となり、また、その営業収入を挙げる努力や工夫、さらにそれが達成されないような状況が繰り返し刺激となりVPC発生の閾値を低下させ、その出現頻度を増加させていたと推定された。これらは、ダブルプロダクトの高値、心電図の虚血性変化、さらに尿中アドレナリン排泄量の亢進がVPC出現頻度の増加をもたらし、さらに深夜の運転後半での低額の営業収入といらいら感の増加の重なりが見られたことから示唆された。
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