研究概要 |
【目的】 自治体焼却場労働者のダイオキシン類の体内蓄積状況を把握する。 【方法】 対象焼却場:3ヵ所(A,B,C)であり、いずれも全連続・ストーカ式で、ガス冷却方式は水噴射(A,B)およびボイラー(C)である。除塵装置は電気集塵器(A,B,C)およびバッグフィルター(C)である。排ガス中ダイオキシン類濃度は、電気集塵器の場合、A、B、Cの順に、8.9〜42、0.82〜1.35、3.1〜12ng-TEQ/Nm^3、バッグフィルターの場合(C)、0.072〜0.24ng-TEQ/Nm^3である。血清中ダイオキシン類濃度測定:焼却場労働者10名づつ、計30名を選び対象者とした。同じ地域で勤務する、職業的にダイオキシン類曝露がない労働者10名づつ、計30名を選びコントロールとした。朝食前に100mlの採血を行い、遠沈後、血清を採取し冷凍保存した。分析はPattersonらの方法に準じて行った。 【結果】 毒性等価量(TEQ)の平均値は、A地域の焼却場労働者およびコントロールで19.2および22.9Pg-TEQ/g脂肪、B地域では28.8および24.5pg-TEQ/g脂肪、C地域では23.4および23.6pg-TEQ/g脂肪であり、焼却場労働者とコントロール間に有意差はなかった。異性体別に見ると、A地域では1,2,3,7,8-PeCDFおよび1,2,3,4,6,7,8-HpCDFが、B地域ではl,2,3,4,6,7,8-HpCDFが、C地域では2,3,4,6,7,8-HxCDF、1,2,3,4,6,7,8-HpCDFおよびOCDFが、焼却場労働者で有意に高かった。 【考察】 焼却灰や飛灰中の2,3,7,8-体のダイオキシン類濃度は、ダイオキシンでは1,2,3,4,6,7,8-HpCDDおよびOCDDが、ジべンゾフランでは1,2,3,4,6,7,8-HpCDFが高い。一般に、血清中濃度は、これらの中で、1,2,3,4,6,7,8-HpCDFがもつとも低く、この物質の上昇が最も検出されやすい。本調査では、いずれの地域でも、血清中1,2,3,4,6,7,8-HpCDF濃度は焼却場労働者の方が高かったが、焼却灰や飛灰の取り込みに起因するのものと考えられる。
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