研究概要 |
我々はこれまで検索の進んでいなかった性染色体上の種々のマイクロサテライトを検索対象として、以下の検討を加えた。 1)無作為に選択した日本人集団とドイツ人を対象として血液を採取し、検討を加えた結果、DYS388、DYS389、DYS390、DYS391、DYS392、DYS393でそれそれ6、10、8、10、6,6のアリルの存在が確認された。このうちDYS388、DYS391、DYS392、DYS393では特定の1つのアリルに頻度が偏在し、法医学的応用は難しい事が明らかになった。DYS384に関しては20近くもの多数のアリルが確認されたが、女性由来の試料からでもバンドの増幅が確認される事、男性で2つのアリルを所持するものが存在する事などから、完全なるY染色体特異性を有していない事が明らかとなった。2)X染色体上のSTR群に関しては、前記した実験で決定したアリル頻度を基にマイクロサテライトの不安定性が予想される種々の疾患由来の試料に応用した結果、特定の疾患で不安定性が顕著である事が明らかとなった。3)Y染色体上のSTR群に関しては、前記した実験で決定したアリル頻度を基に性犯罪試料、実際の親子判定など女性由来の影響を受けない男性試料由来のみでの判定を試みた。結果DYS390,DYS389-1,DYS392での判定がヘテロ接合率が高く有効である事が明らかになった。4)広くアジア人種を対象とした報告と我々のアリル分析の結果とを比較検討したところDYS388、DYS392は日本人のアリル頻度は中国人集団、モンゴル人集団、台湾少数民族集団(アミ族)のそれとは大きく異なっており、「日本人の起源、アジア諸国での遺伝子移行性」の検索などの人類遺伝学的応用が可能である事が明らかになった。
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