研究課題/領域番号 |
09670431
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
長尾 正崇 東京大学, 大学院・医学系研究科, 助教授 (80227991)
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研究分担者 |
高取 健彦 東京大学, 大学院・医学系研究科, 教授 (30001928)
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キーワード | Sarin / Acthylcholinesterase / Erythrocyte / isopropyl methylphosphonic acid / methylphosphonic acid / GC-MS |
研究概要 |
神経剤であるサリンは非常に毒性が強く、微量で生体を死に至らしめ得るため、犠牲者の血液、組織中からのサリンの検出は極めて困難である。一方、サリンの毒性はacethylcholinesterase(AChE)の活性中心に存在するセリン残基と結合し、AChEを失活させることによるものとされており、毒性を発現したサリンは、isopropyl methylphosphonoserineまたはmethylphosphonoserineとしてAChE分子中に残存していることになる。したがって、AChEよりこれらのサリン加水分解産物を検出・同定することにより、急性サリン中毒の法医学的診断は可能となる。 新たに合成した、sarin-like organophosphorus agentであるbis(isopropyl methyl)phosphonate(BIMP)を用いて実験的にサリン中毒患者血球を作製した。その赤血球膜よりAChEを溶出させ、部分精製を行った。その後、alkaline phosphataseがAChEの活性中心に到達できるように、trypsinによるAChE分子の低分子化を行い、alkaline phosphataseでisopropyl methylphosphonic acidならびにmethylphosphonic acidを遊離させてGC-MSによりこれらの検出・同定を行い、急性サリン中毒の法医学的診断法を確立した。また、この方法を用いて、平成7年3月20日に発生した地下鉄サリン事件の死亡者4例の血液を試料にサリン加水分解産物の検出・同定を試みたところ、4例ともサリン加水分解産物であるisopropyl methylphosphonic acidならびにmethylphosphonic acidの検出に成功した。
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