研究概要 |
HLA抗原のDNAレベルでの多型性は豊富で、クラスI抗原、クラスII抗原を発現する遺伝子は380以上にもなる。この中でもDRB1遺伝子数は、106種類確認されており、日本民族での遺伝学的指数(ヘテロ接合度、識別率、排除率)が高く法医学での利用価値があることを我々は報告してきた。PCR-RFLP法、PCR-SSO法、PCR-SSP法やPCR-SSCP法を用いたDNAタイピングは、いずれも良質で充分量のDNA試料が得られれば、精度の高い結果を示す。しかし、法医学で扱う試料は微量で陳用性が高い。今回はDRB1遺伝子タイピングについてnested PCRを用いた検査法について検討した。血清学的検査で調べることが可能な14種類の抗原(DR1,DR2,DR3,DR4,DR11,DR12,DR13.1,DR13.2,DR14.1,DR14.2,DR7,DR8,DR9,DR10)についてシークエンス特異的なプライマー(SSP)をつくり、PCRで増幅産物の有無から型判定をするシステムを作った。また型判定が微量試料でも可能になるよう各アリル特異的プライマーを挟むようにその上流と下流に共通プライマーを設定し、PCRを行い更に増幅産物を一部使い、SSP法でPCRを行うnested PCRの実用性について検討した。その結果10pgのDNAが確保できればタイピングが可能であることが示された。また、この方法でDR2,DR4,DR5,DR6,DR8のDRB1遺伝子多型性が高い抗原についてもRFLP法を用いてアリルタイピングが可能であることが証明された。SSP法を用いたDNAタイピングでは、0.998と0.84の識別率、排除率を示し、この方法の法医学での利用価値が高いことが示された。
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