研究概要 |
法医学的有用性の高いSTR座位,HUMD21S11およびHUMD11S554には,シークエンス変異が多数存在することが知られている。そのため両座位のアリルの同定には従来よりのアレリックラダーマーカーを用いる方法(AMPFLP法)に加え,アリルのシークエンス解析を行うことが必須であり,シークエンス変異を検出することで個人識別の精度はさらに高いものとなる。そこで,まず,日本人集団におけるHUMD21S11およびHUMD11S554のシークエンス変異を明らかにすることを目的として,これまでに日本人非血縁者約500人からAMPFLP法により検出した両座位のアリル(HUMD21S11では13種類,HUMD11S554では46種類)について,ダイレクトシークエンス法による解析を行った.その結果,HUMD21S11では7種類のアリルにおいて,HUMD11S554では14種類のアリルにおいて,それぞれシークエンス変異が検出された。HUMD11S554のシークエンスをAdamsらの方法に従いその可変領域の基本構造の違いに基づいて分類したところ,本研究において新たに見い出されたIA^2,IA^3,IA^4およびIB^3型を含め,9種類の塩基配列型に大別された。HUMD11S554に関しては,さらにHungarian Caucasian 非血縁者101人についても同様の解析を行い日本人集団のデータと比較したところ,検出された塩基配列型に違いが認められた。この違いが人種間差異によるものか否かを明確にするためには,さらに両集団の試料数を増やして検討する必要がある。シークエンス変異の効率的な検出方法を検討するために,シークエンス変異の認められたアリルについてグイレクトシークエンス法,PCR-SSCP法およびCFLP法による分析を行った結果,ホモ型のアリルではPCR-SSCP法が,ヘテロ型のアリルではダイレクトシークエンス法が,それぞれ最も有効な検出方法であることがわかった。これらの方法による両座位のシークエンス解析法は陳旧血痕や毛髪毛幹部等の法医学が試料にも利用可能であり,法医鑑定実務において有用な手法となりうるものと考えられる。
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