研究概要 |
Lewis式血液型は、新生児期から乳幼児期にかけて表現型が変化することはよく知られている。しかし、その成因については十分解明されていない。そこで、臍帯血、新生児および乳幼児の血液について、Lewis式血液型を血清学的に検査し、血漿中のLewis^aおよびLewis^b抗原量を測定した。また、Lewis(Le)遺伝子型とLewis抗原の出現に密接に関係するSecretor(Se)遺伝子型を決定することにより、真のLewis式血液型発現の時期の決定および各Lewis抗原量と遺伝子型(Le,Se)との関連について検討した。さらに、Lewis抗原の血球への吸着への影響を検討するため血漿成分の分析を行った。 その結果 1〕臍帯血はすべてLe(a-b-)であった。生後1ケ月でLe(a+b-)が検出され始め、生後2ケ月から10ケ月の間Le(a+b+)が観察された。Le(a+b+)のsubjectsは将来Le(a-b+)になることがLeとSe遺伝子型で裏ずけられた。Le(a-b+)は生後9ケ月から検出され始め、それらは真の血液型であった。2〕臍帯血はすべてLe(a-b-)でありながら、血漿中にLe^a抗原と少量のLe^b抗原が検出された。臍帯血血漿中に検出された両抗原はse/se genotypeにおいて有意に高かった。Le遺伝子については抗原量との相間は見られなかった。Le^a抗原の出現に関しては、se/se型が量的に多いことは合成ルートに合致する。(Le^b抗原が多いことは矛盾する。)これらの結果から、Lewis活性はSecretor活性より先に発現するとの推測を裏打ちできる。また、Le^a抗原は、生後5日から増加し始め、時間経過とともに赤血球に吸着されると推測される。3〕臍帯血と成人血の血漿成分をポリアクリルアミドゲル電気泳動により比較したところ、分子量約24,000以下の成分が臍帯血には検出されたが、成人血には検出されなかった。high density lipoprotein(HDL)とlow density lipoprotein(LDL)の濃度は成人血の方が高かった。しかし、臍帯血においてLDL3成分が検出されたが、成人血においてはその3成分中1番分子量の高い1成分が検出された。臍帯血には、成人血にない何らかの低分子の蛋白が存在し、これがLe抗原の担体となり、血球上の抗原量の違いを引き起こすのかもしれない。
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