アルコールは体内でアセトアルデヒド・酢酸へと代謝される。本研究は、血中アルコール及びアセトアルデヒド・酢酸の体内動態と臓器障害との関係を検討することを目的とする。このために、アルコールの急速静注を行い、厳密な薬物速度論的解析を行っている。血中アルコール及びアセトアルデヒド・酢酸の濃度測定はガスクロマトグラフを使用し、気化平衡法による。実験動物としては家兎を使った。血中アセトアルデヒド濃度測定にはPCA法によった。臓器障害の指標として血清中の過酸化脂質及びLDHやGPTを測定し、分光光度法(島津製UV-1600)を使用した。投与するアルコールは非線形速度論に従うため、投与量の異なる複数の血中消失曲線についての動態解析を行わなければならない。得られた血中アルコール及びアセトアルデヒド・酢酸濃度曲線を使って、現在、モーメント解析及びコンパートメントモデル解析を行っている。このモーメント解析は非線形薬物動態の基本的動態を調べる検定法として有用である。血中アセトアルデヒド濃度は二峰性の変化を示し、血中酢酸濃度はプラトーを形成する台形型の変化を示した。また、フラッシング反応を起こす人と同じ様な実験条件を得るため、家兎にアルデヒド脱水素酵素の阻害剤であるシアナマイドの前処置を行い、アセトアルデヒド蓄積によるアルコールとのその代謝産物や臓器障害への影響を調べ始めている。実験動物をコントロール(アルコール単独投与)群、シアナミドを処置した上でのアルコール投与群に分け、各投与量の群について実験をする。以上により得られた各消失曲線から、アルコールとアセトアルデヒド・酢酸及び各臓器障害マーカーの血中動態を解析し、人体データと比較検討する。
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