研究概要 |
物理的反復侵襲による形態学的変化をin vitro,in vivoの両実験モデルにて検討した。in vitroモデルにおいては,ラット副腎褐色細胞腫細胞(PC12)を分化誘導し,水平振動により侵襲を与え超微細構造学的検討を行った。その結果,損傷部位における軸索の局所的腫大の成因として,突起の筒状形態を保つ細胞骨格のネットワークの破壊が挙げられ,それにより損傷部位が球形に変形することが確認された。また腫大部は損傷を受けた神経突起の再生の場であり,神経突起の再生は腫大部の細胞骨格を再構築することで進行する。この再構築は比較的短時間の内に行われるが、その理由として細胞骨格ネットワークの破壊が主にアクチンフィラメントおよび細胞骨格のクロスリンキングの部分に生じ,長径方向の骨格は保存されていることが考えられた。 in vivoモデルは,ラット頭蓋冠にステンレス円板を固着させ,,円柱状鉛ウエイト(450g)をアクリル管内で自由落下させ,頭部のステンレス円板に1回衝突させることにより侵襲を加えた。3回打撃群は48時間おきに3回侵襲を与え,1回打撃群は初回のみ侵襲を与えそれぞれ初回打撃から7日後に潅流固定して組織化学的検討に供した。3回打撃群・1回打撃群のいずれにおいても頭蓋骨骨折,肉眼的な頭蓋内出血・脳挫傷等の所見を認める例はなかった。一方,組織学的には3回打撃群において脳梁における神経線維の蛇行,軸索間の空隙の拡大などの特異的所見が認められた。retraction ballの形成については一定した所見は得られなかった。また3回群においてはGFAP陽性アストロサイトなどの反応性グリアの局所的増生も認められた。なおビメンチン陽性アストロサイトはほとんど確認できなかった。1回打撃群では有意な変化が認められず,本モデルは比較的軽度のびまん性脳損傷モデルたりうると考えられた。
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