研究概要 |
DNAの低分子化を抑制するホルマリン固定液の処方を目的とし、種々のホルマリン固定液(10%v/v)により組織を固定し、抽出されるDNAサイズおよび各種ローカスのアリル増幅に対する影響を検討した。 9年度:(1)ホルマリン、(2)中性緩衝ホルマリン(いずれも10%v/v)を対照とし、これにEDTA〈5mM、50mM)、MeOH(10%)、NaCl(150mM)およびFlavonoid(1%、2.5%)を各々添加した固定液でのヒト臓器組織中のDNAの保存性(1.2kbp以上のDNAの定量)およびDlS80ローカスの増幅を検討した。EDTA、NaClおよびFlavonoid添加群の順にDNA分解抑制効果があり、7日以内の固定でいずれも鋳型として必要なサイズのDNAが残存し、アリル増幅も良好だった。 10年度:genomic DNAに添加したDNase I活性に対する抑制効果はEDTA添加群で顕著であり、STR(THOl,vWA)、ABOおよびAmelogenin遺伝子も再現性よく増幅された。 11年度:組織DNAの保存効果が良好であったEDTAおよびNaCl添加の2種類に限定して、2年間固定を続けたところ、長期固定中(最長2年)の臓器(肝、腎、肺)については、EDTA添加群が最も良好で1.2kbp以上のDNAも相当量残存していた。剖検体の実際例を想定して、ややDNA分解の進行した臓器についても検討したところ、添加濃度は、腐敗の進んだ組識に対処するためにも5mMが適当と考えられた。DNAをサイズ別に分画採取しTemplateとすると、1.2kbp以上のDNAが採取された場合にはDlS80型の判定が、500bp以上のDNAが残存していた場合には、TPOX,vWA,THOl型いずれのalleleも増幅できた。
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