研究概要 |
HLA型は他の遺伝形質に比べ非常に多くの多型性を示すことが知られている。HLAクラスII抗原遺伝子型判定は、既に各遺伝子座において種々の方法(PCR-SSO法、PCR-SSP法、BCR-BFLP法、PCR-SSCP法)が確立されている。HLA-DR抗原遺伝子型判定は、クラスII抗原の中で最もAllel数が多いことから、今後型判定が法医学分野での個人識別や親子鑑定へ応用されることが期待されるものである。そこで、HLA DRBタイピングの親子鑑定例、血痕試料への応用について検討した。 (1) 4家系(No.1-No.4)12名について、SSO-DBBキット(Biotest 社)を用いてSSO-DBBタイピングし、親子鑑定4家系(否定例2例、肯定例2例)を検討した結果は、4家系共に従来の面液型検査成績と矛盾しなかった。DRB1遺伝子型判定は、親子鑑定へ充分利用できるものと思われた。また、この結果は、PCB-SSP法の結果とすべて一致した(Shinozuka,T.,Hara,M.,et.al.:HLA DRB genotyping with SSO probes and its application to paternity lesiting. Res.Pract.Forens.Med.,41,47-51,1998.)。 (2) 近年、DNAの抽出操作を行わずに試料から直接PCB産物を得る方法が報告されている。最近、直接増幅試薬としてDrop PCR Kit for Human Bloodが市販された。そこで、本Kitを用いて面接PCR法による血痕からのHLADBB遺伝子タイピングについて検討した。 5例の新鮮血痕の直接増幅法によるHLA DRB型解析をSSO法によって行ったところ、いずれも型判定が可能であった。また、対照として新鮮血痕作成時に血液からあらかじめ抽出したDNAを用いて、SSP法(DINAL)でHLA DBB型判定を解析した。その結果、両方法によるHLD BRB型はいずれもよく一致した。 陳旧血痕(1年、5年、10年、15年、20年経過)について、直接PCR法で検討したところ、5年経過のものまではHLA DRB型の増幅バンドが検出され、SSO法で型解析が可能であった。10年、15年及び20年経過した陳旧血痕では、HLA DRB型の増幅バンドは確認出来なかった。陳旧血痕に対するDrop PCR Kit for Human Bloodを用いた直接PCR法については、PCR条件等をさらに検討する必要があると思われた。
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