ABO式血液型物質の糖鎖は、赤血球では主としてtype2糖鎖、消化管粘膜・体液では主としてtype1糖鎖で構成されている。H糖鎖はα1-2フコース転移酵素により合成され、現在H酵素とSe酵素の二種類のα1-2FTが存在することが確認されている。赤血球のtype2H糖鎖はH酵素により合成され、消化器のtype1H糖鎖はSe酵素により合成されると考えられている。これらの糖鎖を合成するH酵素及びSe酵素の抗体を用いて両酵素の発現を調べることは、血液型を理解するために重要である。今回、両酵素の遺伝子が判明したので、推定されるアミノ酸配列上の異なる部分のペプチドを合成し、抗H酵素抗体及び抗Se酵素抗体を作製した。H遺伝子又はSe遺伝子をCOS細胞に導入して、H酵素またはSe酵素を発現させ、抗H酵素、抗Se酵素の特異性を調べた。その結果、抗H酵素抗体は、H酵素を特異的に染色することができたが、抗Se酵素は反応しなかった。現在、Se酵素については、他の部分のアミノ酸配列を合成し、抗体を作製中である。得られた抗H酵素抗体を用いて、ヒト顎下腺を染色し、H酵素の分布を調べている。
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