研究課題/領域番号 |
09670460
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研究機関 | 産業医科大学 |
研究代表者 |
田中 宣幸 産業医科大学, 医学部, 教授 (60126597)
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研究分担者 |
田中 敏子 産業医科大学, 医学部, 講師 (80141745)
北 敏郎 産業医科大学, 医学部, 助教授 (00131912)
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キーワード | びまん性軸索損傷 / fluid percussion injury / βAPP / TNFα / ミエリン |
研究概要 |
びまん性軸索損傷に関する最近の知見によると、ストレッチを加えた神経繊維には断裂像などの明らかな障害が認められるものとその障害が認め難いものの2種類が存在すると報告され、後者の神経線維がsecondary axotomyの主役を演じる可能性を示唆している。 われわれはこの見かけ上には障害のない軸索に何らかの変化が生じているのではないかと考え、昨年度と同様のfluid percussion injury動物モデルを用い以下の実験を行った。最初に、外傷性脳損傷などの原因で蛋白質分解障害より神経細胞あるいは軸索に沈着することが報告されているアミロイドβタンパク質前駆体(βAPP)の局在を検討した。その結果、衝撃1時間後から軸索内にβAPPの染着が確認され、軸索における蛋白分解障害が遅くとも衝撃1時間後から生じていることが明らかとなった。次に、脳室内にトレーサーであるHRPを投与し経時的に軸索に対するトレーサーの透過性を検討すると、衝撃1時間後から神経繊維とくにミエリンに透過性亢進が生じていることが明らかとなった。さらに、ミエリン脱落やオリゴデンドログリア細胞にアボトーシスをもたらすことが報告されているTNFαの局在を検討し、かつ脳梁を含む衝撃部位での脳組織のTNFαの定量も行った。TNFαの測定においては、衝撃1時間後から上昇し始めて3時間後でピークとなり、24時間後では減少傾向であった。電顕を用いTNFαの局在を検討すると、衝撃30分以降ミクログリアで、1時間以降ではほかのダリア系細胞にも局在が認められた。また、ミエリンの構成要素でもあるオリゴデンドログリアでのTNF局在も観察され、TNFαはミエリンの透過性亢進に大きく関与しているものと思われる。 以上の結果、二次性の軸索障害の発生に脳梁や脳幹部におけるダリア系細胞からのTNFαの産生が関与している可能性が考えられる。
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