抗リン脂質抗体症候群(APS)患者血清中に検出される病的意義のある抗カルジオリピン抗体(aCL)がカルジオリピン単体ではなくカルジオリピンと血中のβ2-グリコプロテインI(β2-GPI)との複合体を認識している事が明らかになった。実際には病的意義のあるaCLはβ2-GPI上の新しい抗原決定基を認識している。β2-GPIは5個のドメインからなるが、この新しい抗原決定基は主にβ2-GPIの第4ドメインに存在すると推定されている。申請者らは実際に多数のSLE患者を対象に抗β2-GPI自己抗体発現と血栓症の既往の関係を検討し、本自己抗体の臨床面での重要性を明らかにした。 自己抗体としての抗β2-GPI抗体産生にはβ2-GPI特異的T細胞によるヘルプが関与しているものと推定される。本研究ではβ2-GPIのT細胞エピトープの解析を試みる。 本年度は上記研究と関連していくつかの検討を行った。 i)APS患者の末梢血リンパ球からEBウイルスを用い不死化B細胞株を樹立した。これらの細胞から固相酵素抗体法により、実際に抗β2-GPI抗体が産生されていることを確認した。さらに限界希釈法等によりモノクローナル抗β2-GPI抗体産生株の樹立を試みたが、現在までのところ、不成功に終わっている。今後は同様のアプローチを続けるとともに、モノクローナル抗β2-GPI抗体産生株を必要としない方法を検討する。 ii)T細胞刺激試験によりβ2-GPI特異的T細胞の存在の確認。APS患者の末梢血リンパ球をそのまま用いた場合は検出はほぼ不可能であることが明らかとなった。 iii)全身性エリテマトーデス患者のIgAクラス抗β2-GPI抗体価を測定し、血栓症と関連があることを明らかにした。 iv)正常人の血中β2-GPI濃度を測定し、欠損者1名を発見し、解析中である。
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