研究概要 |
全身性エリテマトーデス(SLE)における可溶性Fas(sFas)のヘテロジェネイティとその機能的意義を解析した. 1.SLEの末梢血単核細胞におけるFas遺伝子の発現をRT-PCR法にて解析すると,膜型および膜貫通領域欠損型Fas(sFas△Ex6)以外に,サイズの異なる複数のPCR産物が認められた.それらをクローニングして塩基配列を決定すると,その一つはエクソン3,4,6が選択的スプラインシングにより欠損した遺伝子に由来していたことから,SLEでは少なくとも2種類以上のsFas分子種の存在が示唆された. 2.エクソン3,4,6欠損型可溶性Fas(sFas△Ex3/4/6)が,sFas△Ex6と同様にFas依存性アポトーシスを抑制するかどうかを解析した.sFas△Ex3/4/6はN端側49アミノ酸はエクソン2にコードされるFas分子であるが,C端側21個のアミノ酸はフレームシフトにより非Fasと考えられる.そこで,sFas△Ex3/4/6と同等の機能的分子と考えられるエクソン2からなるFasとヒトIgGのFc部分から構成される融合蛋白(sFasEx2-Ig)発現ベクターを構築した.本発現ベクターを導入されたCOS-7細胞の培養上清から,プロテインAカラムにてsFasEx2-Igを精製した.また,Fas分子の細胞外ドメインとFcとの融合蛋白(sFasExt-Ig)も同様に精製した. Fas陽性のJurkat細胞とヒトFasL遺伝子のトランスフェクタント(hFasL/L5178Y)との共培養系に精製sFasEx2-IgおよびsFasEx2-Igを加えると,それぞれ88.1,38.2%のアポトーシス抑制が認められた.興味あることに,最初にsFasEx2-IgおよびsFasEX2-IgとJurkat細胞とを反応させ,よく洗浄後にhFasL/L5178Yを加えても,それぞれ45.8,23.8%のアポトーシス抑制が認められた.以上の結果は,sFas△Ex3/4/6もアポトーシス抑制性の機能的分子であり,sFasによるアポトーシス抑制機序には複数存在することが示唆された.
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