研究概要 |
全身性エリチマトーデス(SLE)において発現される可溶性Fas分子種の同定と機能ならびに臨床的意義を解析し,以下の成果が得られた. 1. SLE末梢血単核細胞より複数種の可溶性Fas遺伝子をクローニングして塩基配列を決定すると,推定される可溶性Fas分子のN端側にはエクソン2でコードされる49個のアミノ酸が必ず含まれていたが,それ以下のアミノ酸は可溶性Fas分子種により異なっていた.遺伝子組換えにより弛のエクソン2とヒトIgGのFc部分から成るFasBx2-Igを精製し,in vitroでの機能解析を行った.FasEX2-Igは,Fasの細胞外全ドメインを含むFasExt-Igと同様に,Fas依存性アポトーシスを抑制した.・その抑制機序には,(1)FasLとの競合阻害,・(2)FasLの膜型Fasへの結合抑制,(3)可溶性Fasの膜型Fasへの結合によるシグナル伝達不全が考えられた. 2. エクソン3/4/6が欠損した可溶性Fas(sFas△Ex3/4/6)を同定するために,エクソン2とそのC端側の非Fasアミノ酸配列に特異的な2種類のモノクローナル抗体(mAb)を作製したGl.6はFasのN端より36〜47番目のペプチドを認識すると共に,エクソン2でコードされるアミノ酸を含む可溶性Fas分子に反応した.また,B8.8は,sFas△&3/4/6に含まれる非Fasアミノ酸配列に反応した.これら2種類のmAbにより新たなELISAを開発し,SLE血中のsFas△Ex3/4/6レベルを検討した.陽性率は細胞外全ドメインを含む可溶性Fasよりも低かったが,SLE活動性とは相関する傾向がみられた. 3. 可溶性Fasの遺伝子導入動物作製の予備実験として,T細胞株(Jurkat細胞)に遺伝子導入を行った.しかし,遺伝子は導入されても,可溶性Fasの培養上清中ヘの分泌は検出されなかった.このことは,細胞の種類により遺伝子発現や分泌機序が異なることを示唆しており,血中可溶性Fasの産生細胞が必ずしもT細胞系リンパ球ではないことが明らかにされた.
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