高濃度のリコンビナントTNFα、IL1-βあるいはその両者は平滑筋の収縮性の亢進や弛緩性の低下を惹起すること(in vitro)がウサギ気管筋で知られている。しかし、我々がヒトの気道平滑収縮を用いて追試したところ、carbachol用量反応曲線及び透過処理後のpCa-tension曲線に明らかな変化は認められなかった。ヒト気管支平滑筋をマクロファージあるいは肺肥満細胞の培養上清存在下で組織培養することも試みたがviabilityに問題があり成功しなかった。そこで現在TNFαトランスジェニックマウスを用いて感作モデルで検討している。一方、Ca^<2+>感受性増強効果では低分子G蛋白質rhoAp21とその標的蛋白であるrho kinaseが重要な働きを担っているとされ、rho kinaseの阻害剤(Y-27632)を用いてヒト気管支及びウサギ気管筋で検討したところCa^<2+>感受性増強効果を阻害することにより生筋及び透過処理筋において収縮した気道平滑筋を1-2μMのIC50値をもって完全に弛緩させた(Am J Respir Cell Mol Biol in press)。また、モルモットin vivoにおいてY-27632の吸入投与はacethylcholine吸入による気道抵抗の上昇を抑制した。以上よりY-27632は新しい喘息治療薬となりうるが可能性が明らかとなった。これらY-27632の成績は第43回日本アレルギー学会シンポジウム(将来のアレルギー治療戦略)で発表した。また、これまでCa^<2+>感受性増強効果の機構としてrho/rho kinase系以外にprotein kinase C(PKC)の関与が考えられていたが両者の関係は明らかではなかった。そこでPKC阻害剤としてGF109203Xを用いたところこの前処置はphorbol esterによるCa^<2+>感受性増強効果は完全に抑制したが、GTPγSによるCa^<2+>感受性増強効果を約20%程抑制するに過ぎなかった。一方、Y-27632の前処置は用量依存性にGTPγSによるCa^<2+>感受性増強効果を抑制したが収縮前期8分周辺に16%程度の収縮が残存した(Y-27632非感受性部分)。これはGF109203Xの共存により完全に消失した。以上より気道平滑筋ではCa^<2+>感受性増強効果がその収縮維持に重要でありrho/rho kinase系が主要経路であること、PKCは収縮開始時に部分的に関与するが20分までには消退することが明らかとなった。さらにrho kinaseは酵素学的にはミオシン軽鎖をmyosin light chain kinaseと同等以上の効率で燐酸化するが、組織内ではこの作用は大きくないことをY-27632とwortmanninを用いた薬理学的rho kinase及びmyosin light chain kinaseの除去実験で明らかにし、Biophysics Meeting(Baltimore、1999)にて発表した。
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