研究概要 |
アレルギー反応の慢性炎症像の形成や増幅に関してリンパ球、肥満細胞、好酸球等の炎症細胞のネットワークの存在が想定されている。本研究ではこのうち肥満細胞と好酸球の細胞間の相互作用に注目してヒト肺の肥満細胞細胞を用いてネットワークの解明を試みることを目的とした。純度99%に精製したヒト肺肥満細胞をSCF(Stem cell factor)と抗IgE抗体存在下で刺激し遊離するIL-5,GM-CSF,TNF-αを酵素抗体法で測定し、それぞれのmRNAの発現はRT-PCR法にて検討した。 ヒト肥満細胞はIgE依存性の刺激によってIL-5のみならず356pg/10_6肥満細胞といった、抗CO4+T細胞cell lineから産生されるGM-CSFの約1/5のGM-CSF量を産生する事が明らかとなった。又IL-3もIgE依存性の刺激によって有意に産生された。IL-3,IL-5,GM-CSFは好酸球の活性化作用をもつことが報告されており、IgE依存性の刺激後4-8時間でヒト肥満細胞から遊離されることから、遅発性アレルギー反応への関与が推定される。ベタメサゾン(10_<-8>10_<-6>M)は、ヒト肺肥満細胞から抗IgE抗体刺激によるGM-CSF遊離に対し、濃度依存性に抑制したことより、ステロイド剤のアレルギー疾患に対する作用の一端が示唆された。SCFと抗IgE抗体共存でヒト肺肥満細胞を刺激後24時間培養した細胞上清は好酸球を活性化させECP(eosinophi cationic protein)を有意に遊離させ、この遊離はIL-5,GM-CSF,TNF-αの阻止抗体によって有意に抑制された。このことは肥満細胞と好酸球との細胞間相互作用の存在を強く示唆した。またサブスタンスP刺激によってもヒト肺肥満細胞からTNF-αが産生された。この事実は、非IgE依存性の刺激においても肥満細胞と好酸球との細胞間相互作用が存在することを示唆する。 本来アレルギーのeffector cellである肥満細胞からも種々のサイトカインが遊離され好酸球の細胞機能に影響を及ぼし、アレルギーの慢性炎症形成に関与することが推定される。
|