多発筋炎発症の免疫機構を明らかにするために、DNA vaccinationを用いて、骨格筋細胞に抗原蛋白を発現させ、筋炎が発症するか否かを検討した。CMVプロモーターを持つβ-galactosidase発現ベクター50μgをマウス大腿筋に投与したところ、2-5%の筋細胞にβ-galactosidase蛋白の発現が認められた。この発現は組織化学染色で確認された。また、β-galactosidase発現ベクターを投与したマウスではβ-galactosidaseに対する免疫細胞の誘導が、抗体産生、増殖反応により確認された。しかしβ-galactosidaseを発現している筋局所では、筋炎像は認められなかった。さらに、β-galactosidase発現ベクターを複数回投与しても、筋炎は誘発されなかった。以上より、DNA vaccinationによる抗原蛋白単独の局所での強制発現は、全身的な抗原に対する免疫反応を誘導するが、抗原発現局所での炎症反応は誘導しないことが明らかになった。現在、局所での炎症反応を誘導する抗原以外の副刺激がいかなるものか明らかにするために、筋細胞に抗原蛋白の他、B-7、ICAM-1等の接着分子、IFN-γ等のサイトカインをDNA vaccinationにより同時に発現させ、炎症を誘導するか否かを検討中である。
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