好酸球と線維芽細胞は気管支喘息患者の気管支粘膜に存在し、気管支喘息の病態において重要な役割を果たすと考えられるが、好酸球と線維芽細胞の間の反応は十分には検討されていない。平成9年度の研究において線維芽細胞存在下での好酸球の脱顆粒が両細胞の活性化により増強され、一部接着が関与していることを示唆する結果を得たが、本年度の研究で接着分子の関与のより詳細な検討を行った。その結果、抗ICAM-1抗体、抗CD18抗体、抗CD29抗体により一部ECP遊離増強が抑制され、線維芽細胞存在下の好酸球脱顆粒には線維芽細胞側のICAM-1、好酸球側のCD18、CD29の接着分子が一部関与している可能性が示唆された。 次に本年度は肺線維芽細胞のSCF産生に対する好酸球の影響を検討した。方法はヒト胎児肺線維芽細胞HFL-1をプレート上で培養し、confluentになった時点で、種々のサイトカインの存在下、非存在下で48時間培養した。さらに、正常人末梢血より分離した好酸球をIL-5で活性化したものとそうでないものを加えた場合、加えていない場合も試みた。培養後、上清に遊離されたSCFをEIAで測定した。その結果は、線維芽細胞からのSCF産生は、線維芽細胞が種々のサイトカインのうちでIL-4で刺激された時増強した。線維芽細胞からのSCF産生は、線維芽細胞に対してIL-4に加えて、活性化好酸球が加えられた時さらに増強を認めた。以上から、線維芽細胞活性化には、IL-4とともに活性化好酸球が関与し、このことが気管支喘息の病態において重要な役割を果たす可能性が示唆された。
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