目的:年々増加するダニアレルギーの発病を抑えるため、ダニ抗原に対する経口トレランスを誘導する方法の確立を図る。その目的のためダニ抗原を発現した大腸菌や乳酸菌を経口させる動物実験を行う。方法:ダニ抗原のDerf2のcDNAを挿入した発現ベクターpUXlをエレクトロポーション法により大腸菌と乳酸菌Lactobacillus lactisに導入し形質転換して増殖させた。このダニ抗原Derf2を発現している大腸菌の加熱死菌および乳酸菌の生菌と無処置の大腸菌および乳酸菌をC57BLマウスにあらかじめ経口投与した後、Derf2抗原をAlumとともに腹空免疫し、そのIgE、IgG抗体産生をELISA法にて調べた。結果と考察:大腸菌死菌を経口させたマウス群は、いずれもPBSのみ経口させた対照マウスに比べIgE、IgG抗体産生とも亢進した。特にダニ抗原Derf2発現大腸菌経口群ではIgE抗体の産生がより強く増強された。一方、乳酸菌の生菌を経口させたマウスは、ダニ抗原の発現の有無にかかわらず対照マウスと差のない抗体産生を示した。大腸菌は菌自体にIgE、IgG抗体産生を高めるadjuvant作用があるため、たとえダニ抗原が含まれていても経ロトレランスは誘導されなかったと考えられた。逆に乳酸菌にはそれが無いことが示されたにもかかわらす経ロトレランスが誘導出来なかった事について、ダニ抗原の菌当たりの発現量を調べたところかなり低値であった。現在、乳酸菌に効率的にダニcDNAを導入するため、乳酸菌の菌株やエレクトロポーション法の条件を検討している。
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