本年度は、遅延型過敏反応(delayed-type hypersensitivity:DTH)におけるリンホトキシンの役割について、接触性過敏反応(contact hypersensitivity)をモデルとして解析を行った。 接触性過敏反応は通常のプロトコールにしたがい、剃毛した腹部にハプテンであるphenyltrimethylaminoaniline(TMA)を塗布してマウスを感作した後、その5日後、片方の足底(footpad)にTMAを皮下注射し、24時間後に足底の腫脹を測定した。その結果、正常マウスではハプテンの再投与により足底の腫脹がみられ、組織学的にも皮膚への炎症細胞浸潤が認められたのに対して、リンホトキシン欠損マウスの接触性過敏反応は著明に減弱していた。次いで、皮膚移植を用いた実験から、接触性過敏反応の障害が、感作抗原との再会による炎症惹起段階(elicitation phase)にあるのではなく、抗原による感作時(sensitization phase)にあることを明らかにした。さらに、骨髄移植を用いた解析から、このような障害の原因は、骨髄細胞由来であるランゲルハンス細胞やγδT細胞などの障害ではなく、ケラチノサイト(keratinocyte)やメラノサイト(melanocyte)などの非骨髄細胞の障害によることが強く示唆された。 以上、昨年度の本研究で明らかにした、リンホトキシンの液性免疫機構における役割に加え、本年度の研究から、リンホトキシンが細胞性免疫の成立にも深く関わり、生体防御機構において幅広い免疫調節作用をもつことが明らかになった。
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