研究概要 |
1)HCV遺伝子の多様性にについての検討 HCVの持続感染者(キャリア)の血清より、ウイルスRNAの抽出、cDNAの合成を行ない、HCV遺伝子の各領域のプライマーを用いてPCR法によりHCV遺伝子の増幅を行なった。増幅されたHCV遺伝子のクローニングを行い、これらの塩基配列を決定した。 同時に決定されたHCVの領域ごとの塩基配列の変異の頻度を求めた。個体間での相同性は、core領域及びNS5A領域では90%を越えてていたが、HVRでは塩基配列の相同性は著しく低かった。個体内の塩基配列の多様性は、core領域及びNS5A領域では非常に乏しく、すべての塩基配列が全く同一であった例も多く認められた。一方、HVRでは、すべての塩基配列が全く同一であった例もわずかに見られたが、多数で著しい多様性が見られた。領域ごとのアミノ酸の変異にならない塩基の変異の頻度は、core領域及びNS5A領域で非常に高く、塩基配列保存への選択的な圧力がかかっていると思われた。一方、HVRでは、領域ごとのアミノ酸の変異にならない塩基の変異の頻度は、無作為に起こった場合とほぼ同等で、塩基配列保存への選択的な圧力は、存在しないと考えられ、アミノ酸の変異への選択的な圧力の存在も示唆されなかった。 2)Immune Complex中のHCVのHVRについての検討 HCVは血液中で宿主の産生する抗体と結合し、Immune Complexを形成している。その比重の違いにより、Equilibrium CentrifugationによってImmune Complex形成HCVとfree HCVの分画を行なった。HVRの塩基配列を各分画ごとに決定し、両者を比較した。Immune Complex形成HCVとfree HCVのHVRの構成は,異なっていたが、Immune Complex形成HCVとfree HCVの両者に同一のHVRが認められる例が存在した。経時的な検討では、まだ症例が少なく、一定傾向を見いだすには、更に症例を重ねる事が重要であると思われた。
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