本研究では、可溶性VCAM-1の細胞内シグナル伝達機構を検討し、自己免疫病態における、可溶性VCAM-1によるアネルギー誘導機序を解明することを主眼とした。 [方法]1)変異性可溶性VCAM-1はVLA-4結合部位を2つ有する従来型とIgGFcを融合させたdimer型を作成した。2)アネルギー検出系としてIL-2プロモーター領域の主要な転写因子の結合をゲルシフト法にて測定し、またIL-2レポーター遺伝子活性のルシフェラーゼ測定系を確立した。3)VLA-4結合活性の高いJurkat細胞に変異型可溶性VCAM-1を作用させ、細胞を可溶化し、^<32>P標識ATP存在下に、CaMIIキナーゼ活性を測定した。4)リウマチ患者関節液T細胞をCD45抗体と磁気ビーズで分画し、ゲルシフト法を行った。 [結果]19従来型可溶性VCAM-1に関してはさらに安定高発現株が樹立できた。2)ゲルシフト法にてAP-1、NF-AT、Oct-1等の各転写因子の結合が従来型可溶性VCAM-1により、抑制されたが、NF-kBは抑制されなかった。3)従来型可溶性VCAM-1により、CaMIIキナーゼ特異的基質のリン酸化が検出された。また可溶性VCAM-1によるこの反応は、CaMIIキナーゼ阻害剤KN62の添加によって疎外された。4)Western Blot法によるチロシンリン酸化蛋白の検討では、可溶性VCAM-1により、分子量6万の蛋白のチロシンリン酸化が検出さたが、固相化VCAM-1接着時にリン酸化されるFAK分子は検出されなかった。5)可溶性VCAM-1によるアネルギーは主としてリウマチ患者関節液中ではCD45RO記憶T細胞に対して働いていた。6)可溶性VCAM-1よるアネルギー誘導機序にapoptosisが関与している可能性があったのでさらに、抗TNF、TNFレセプター、FAS中和性抗体を作用させ、これらによる影響がIL-2産生にないことを確認した。さらにapotosis非誘導状態でも、FADD、TRADD等のdeath domainは存在することがWestern Blot法にて判明した。 [考案]可溶性VCAM-1はCaMIIキナーゼを活性化させ、IL-2遺伝子n転写を抑制させることにより、アネルギーを誘導していることが判明した。さらに異なった変異型可溶性VCAM-1による、かかるシグナルを誘導するligandのvalencyの検討が、自己免疫病態におけるアネルギー機序解明に今後必要と考えられた。
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