研究概要 |
1. BAG-1の過剰発現によりヒト胃癌細胞の細胞運動能が亢進する。 ヒト胃癌細胞MKN74細胞は,アポトーシスの抑制分子であるBAG-1の発現レベルが低いことから,BAG-1cDNAを遺伝子導入し,BAG-1の過剰発現したstableトランスフェクタントを作製した。これらの細胞株は,増殖能には変化はなく,皮下内接種による腫瘍形成能もコントロールと同一レベルであった。しかし,金コロイドアッセイやトランスウェルを用いた運動能の評価を行ったところ,BAG-1の過剰発現により優位に細胞運動能が亢進することが明らかになった。 既に,アポトーシスの抑制により,ヒト胃癌細胞が転移能を亢進することを証明してきたが,本研究の結果から,BAG-1は,転移能の獲得に重要な因子になることが推測された。 2. PKCの活性化により胃癌細胞のアノイキスは,増強される。 ヒト胃癌細胞MKN45細胞は,接着の足場を喪失するとアポトーシスに陥る。このようなアポトーシスをアノイキスという。このアノイキスを制御する機序は未だ不明であるが,PKCを活性化させることによりアノイキスが増強されることが判明した。しかし,足場に付着した細胞には,影響を与えないことから,足場喪失に依存して,PKCがアポトーシスを誘導していることが示唆された。
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